このコラムを読んでいるのは風俗好きな方が大半かと思います。
風俗に興味を持っている方なら「風営法」という言葉を聞いたことがあるのでは?
この風営法、「風俗営業に関する法律」と漠然とイメージしているかも知れませんが、もっと奥が深いものです。
近年では、大阪のクラブ(ダンスする方のクラブです)の風営法違反をめぐる裁判で「え?クラブって風俗営業なの?」と関心を持った方も多かったかもしれません。
そこで今回は知っているようで知らない風営法について、なるべくわかりやすく紹介したいと思います。
風俗営業=フーゾクは誤解だった【風営法の疑問】
風営法は、風俗営業に関する法律。
それは間違いではないのですが、もしかしたらこんなイメージを抱いていませんでしたか?
「風営法って、要するにフーゾク(性風俗店)を取り締まる法律でしょ?」
実はこれ、ちょっと違います。風営法の規制対象は性風俗店だけではなく、もっと幅広いんです。
風営法の規制対象には大まかに言って 風俗営業と性風俗関連特殊営業があります。このうち、いわゆる性風俗店は、後者の性風俗関連特殊営業にあたります。つまり、風俗営業=フーゾクではないわけです。
ちなみに、一般的に「風営法」と称されますが、実際には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」が正式名称。この法律は1,984年に大幅改正されるまでは「風俗営業等取締法」と呼ばれていました。
当時、この法改正は性風俗店にダメージを与えるとしてテレビメディアなどで盛んに報道されました。そんな影響から「風営法=フーゾク店の法律」というイメージが浸透したのでしょう。
「取締」から「適正化」に名称を変えたのは「法律を守って健全にやっていれば大目に見る」ということ。条文をあたってみると、当局のそんな趣旨が読み取ることができます。余談ですが、1984年(昭和59年)以降の風営法は「新風営法」とも呼ばれます。
風営法が規定する「風俗営業」ってどんなもの?
さて、風営法の規制対象には風俗営業と性風俗関連特殊営業の2つがあると上述しました。この2つはそれぞれ、さらに細かな業種に分類されています。
まずは風俗営業から解説してみましょう。
風営法第2条第1項で、風俗営業を下記のようにカテゴライズしています。
一、(1号営業)
ホステスが接待するクラブやキャバクラ、ホストクラブなどがこの1号営業にあたります。
ここで重要なのが、「接待」というキーワード。接待すると「風俗営業」となり、その中の「1号営業」に該当するというわけです。
風営法第2条第3項では「接待」を「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定めています。正直、条文だけでは一体なにを言っているのかよくわかりません。そこで解釈運用基準をあたってみるとこれらが接待にあたると書かれています。
・談笑・お酌等
特定少数の客の近くにはべり、継続して談笑の相手をしたり、酒等の飲食物を提供したりする行為。
・ショー等
特定少数の客に対して、客室においてショーを見せたり聴かせたりする行為。
・歌唱等
特定少数の客の近くにはべり、歌うことを勧奨し、拍手し、褒めはやす行為又は客と一緒に歌う行為。
・ダンス
特定の客の相手となって、その身体に接触しながら、当該客にダンスをさせる行為。
接触しなくても、特定少数の客の近くに位置し、継続してその客と一緒に踊る行為は接待に当たる。
・遊戯等
特定少数の客と共に、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為。
・ その他
客と身体を密着させる、手を握る等、客の身体に接触する行為。
また、客の口許まで飲食物を差出し、客に飲食させる行為も接待に当たる。
二、(2号営業)
照明を極端に暗くしたバーなどがこの2号営業に該当します。
三、(3号営業)
カップル喫茶やハプニングバーなどがこの業態にあたります。
四、(4号営業)
五、(5号営業)
ややこしいことが書いてありますが、簡単に言えばゲームセンターがこれにあてはまります。
風営法が規定する「性風俗関連特殊営業」ってどんなもの?
では、いわゆるフーゾク店はどんな分類になっているのでしょうか。
性風俗関連特殊営業は、風営法第2条第5項において店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業、映像送信型性風俗特殊営業、店舗型電話異性紹介営業及び無店舗型電話異性紹介営業の4つに大別されています。
詳細は第2条第6~10項において、それぞれ下記のように定められています。
店舗型性風俗特殊営業(第2条第6項)
・一、(1号営業) ソープランド
・二、(2号営業) 店舗型性風俗店(ファッションヘルスなど)
・三、(3号営業) ストリップ劇場・ポルノ映画館など
・四、(4号営業) ラブホテル
・五、(5号営業) アダルトショップなど
・六、(6号営業) 出会い喫茶など
以下、風営法第2条はそれぞれの業種について下記の分類をしています。
無店舗型性風俗特殊営業(第2条第7項)
・一、(1号営業) 派遣型ファッションヘルス
・二、(2号営業) アダルトグッズなどの通信販売
映像送信型性風俗特殊営業(第2条第8項)
アダルトサイトなど
店舗型電話異性紹介営業(第2条第9項)
店舗型テレクラ
無店舗型電話異性紹介営業(第2条第10項)
携帯電話などを使ったテレクラ
ざっと説明すれば、上記が風営法で扱われる業種となります。
これ以外にも「特定遊興飲食店営業」「酒類提供飲食店営業」などの業種もありますが、今回はざっくりした説明なので省きます。
性風俗店開業に許可は不要? 新風営法改正の歴史
風営法は1984年に大幅に改正され、現在の「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に改称されました。
それ以降も風営法は何回も改正されていますが、ここでは私たちに馴染みの深いフーゾク(=性風俗店)にスポットを当て、法改正が与えた影響を振り返ってみます。
1984年(昭和59年)
従来の「風俗営業等取締法」から「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に名称変更。
性風俗店が「風俗関連営業等」として届出制に。のぞき部屋、ファッションマッサージ、ポルノショップ、ラブホテル、ストリップ劇場等が規制対象となる。
当時の警察庁保安部長は、許可制ではなく届け出制にした理由をこう説明しています。
この改正は、条文を8ケ条から51ケ条と増やすというほぼ全面改正に等しいものでした。
性風俗店を公認し、届け出制にするという名目の下、警察の行き過ぎたチェックを懸念した風俗関連営業団体などが激しい反対運動を展開しました。
その結果、警察が権力拡大の狙いとしていた「帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる」(立ち入り検査)の項目が条文から削除されることとなりました。
1998年(平成10年)
「性風俗関連営業等」が「性風俗特殊営業等」となり、店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業、映像送信型性風俗特殊営業に分類される。また、出張マッサージなどの無店舗型風俗店が届出対象に加えられ、デリバリーヘルスが誕生。
2001年(平成13年)
「性風俗特殊営業等」が「性風俗関連特殊営業等」に変更され、「店舗型電話異性紹介営業」と「無店舗型電話異性紹介営業」(テレクラ)の届出義務制度が追加された。
2005年(平成17年)
客引きなどの行為が禁止され、派遣型ファッションヘルスの受付所は届出が必要に。営業禁止区域に定められた地域での営業は摘発対象となる。
2015年(平成27年)
ホテヘルや箱ヘルなどが営業開始できる時刻が「日の出営業」という曖昧な表現から午前6時に明確化。
無許可営業、未成年使用……風営法違反ニュース
風営法違反に関する事件簿から、最近話題になったニュースをピックアップします。
愛知県警中署などは13日、公然わいせつと風営法違反(無許可営業)の疑いで、名古屋市中区錦3丁目にある風俗店「G」を摘発、経営者の男(34)=同市東区=ら2人を逮捕し、従業員の男(25)を現行犯逮捕した。
逮捕容疑は13日午前、無許可の店舗で風俗営業をした上、従業員の男が不特定多数の前で全裸になり、公然とわいせつ行為をした疑い。同店はキャバクラとホストクラブ両方のサービスを提供、名古屋で唯一のダンスショーが見られる店と宣伝していたという。
2018年9 月13日 SANSPO.COMより抜粋
許可なく女性従業員に客を接待させたとし、大阪府警生活安全特捜隊は13日、風営法違反(無許可営業)の疑いで、大阪市北区の繁華街にあるガールズバー「B」など5店を摘発、同店の責任者の男(25)=大阪市北区=ら5人を逮捕した。
店では女性従業員がダーツやカラオケを使って客を接待していたとされる。府警には摘発された5店と系列とみられる店で飲食をした客から「1時間飲み放題で2000円と客引きに声を掛けられたが、数万円を請求された」といった相談が、30件以上寄せられていた。
逮捕容疑は、大阪府公安委員会の許可を受けずに7月下旬~9月中旬、女性従業員に客の接待をさせる飲食店を営業した疑い。
2018年11月13 日 SANSPO.COMより抜粋
東京都葛飾区のキャバクラで、中学生ら15歳の少女2人に接客させたとして、警視庁少年育成課は28日までに、風営法違反(年少者使用)の疑いで店長(29)を逮捕した。
同店長は厚生費や税金などの架空の名目で従業員の給料を減額。少女のうち1人は、男性従業員と連絡先を交換した罰金として50万円の支払いを求められていた。7月、18歳未満の少女が働いているとの情報が寄せられ、同課が調べていた。
逮捕容疑は、十分に年齢確認をせず少女2人を雇い、接客させた疑い。
2018年11月28日 SANSPO.COMより抜粋
条例で禁止されている地域で個室マッサージ店の営業をしていたとして、神奈川県警中原署は7日、風営法違反(禁止地域営業)の疑いで、中国籍の専門学校生(22)を逮捕した。
逮捕容疑は、ほか数人と共謀して平成30年12月5日午後4時40分ごろから約1時間10分間にわたり、県条例で営業が禁止されている同区新城のマンション内にある自宅兼個室マッサージ店で、自ら男性客に性的サービスをした疑い。
2019年1月7日 産経ニュースより抜粋
【風営法まとめ】風営法でフーゾクはどう変わっていくのか
2016年6月に施行された改正風営法によって、クラブなどのダンス営業が緩和されたことは大きな話題となりました。
こうした動きは、時代によって風俗文化が大きく変化していることを示す格好の例と言えるでしょう。
性風俗も時代の流れとともに規制の基準は様々に移り変わっています。
「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」第1章第1条には、同法律の趣旨を「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため」とし、下記のように記しています。
「風俗営業及び風俗関連営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする」
風俗営業の健全化と適正化――。
普段、客として遊んでいるだけではなかなか深いところまで知る機会のない風営法ですが、実は風営法があるからこそ、私たちは安全で楽しい風俗遊びができているとも言えます。
風営法はややこしい上に奥が深く、全部を理解することはとても困難です。ですが、このコラムが皆様が少しでも風営法に興味を持つきっかけになれば幸いです。
またいずれ機会を改めて、今回書けなかった風営法に関する深い話もしていこうと思っていますので、どうぞご期待ください。