最近「フェイクポルノ」が問題視されています。
フェイクポルノとは、ポルノ動画の人物をディープフェイクというAI技術を使って有名人などにすげ替えたもの。ポルノ女優の顔をアイドルなどの顔に付け替えたりするパターンが多いようです。
昔、ヌードグラビアの顔をアイドルにすげ替えた「アイドルコラージュ(=アイコラ)」なるものが流行りましたが、フェイクポルノはその動画版と考えていいでしょう。
フェイクポルノの登場でポルノ業界に様々な課題に直面していますが、考えてみればこの問題はVR技術の普及が著しい風俗業界にとっても無縁ではないような気がします。
そこで、今回のコラムではフェイクポルノの現状と問題点、さらには風俗業界に与える影響について考えてみました。
フェイクポルノってどんなものなの?
フェイクポルノには数多くありますが、代表的なサイトに下記のようなものがあります。
※閲覧の際はくれぐれも自己責任でお願いいたします!
韓流アイドルの他、橋本環奈さん、吉岡里帆さん、石原さとみさん、新垣結衣さんなど日本の芸能人のフェイク動画も人気を集めているようです。
海外セレブを中心としたフェイクポルノを配信。エマ・ワトソン、スカーレット・ヨハンソ、クロエ・グレース・モレッツなどの無修正ポルノ(もちろん、ニセモノ)が人気とか。
こちらも海外セレブが中心。スターウォーズの故キャリー・フィッシャーやデイジー・リドリーといった女優の他、アジア系芸能人も多数見られます。
現在、フェイクポルノ業界をリードしているのはAI先進国の中国だと言われています。
AI技術の低価格化により、中国ではフェイクポルノの闇市場が拡大しているとか。顧客が提供した芸能人や一般人の写真・動画素材をカスタマイズするフェイクポルノ業者もいるらしく、リベンジポルノに発展する危険性も指摘されています。
国際的にはフェイクポルノを違法とする動きが広まりつつあるようです。アメリカでは、バージニア州がいち早く取り締まりに踏み切った他、41州で違法化を検討する動きがあります。こうした動きは今後ますます加速していくことでしょう。
フェイクポルノが風俗業界に及ぼす影響は?
さて、世界中を席巻しているフェイクポルノですが、ポルノ業界に近い風俗業界に影響はないのでしょうか。
「動画×風俗」とくれば、すぐに思い浮かぶのが個室ビデオ/ビデオボックスでしょう。現在はVR動画が人気ですが、もしかしたら今後、フェイクポルノのVR動画を鑑賞できる違法個室ビデオ店が登場する可能性だってあります。
さらに、そこにVR連動オナホを利用した抜き要素が加われば、その気持ち良さはリアルの快感を超えてしまうかも。
また、オナクラにもこうした動きは出てくるでしょう。VRだけではなく、AR(拡張現実)を取り入れたMR技術を駆使して、モードを切り替えるだけで目の前にいるキャストがAIによる合成キャラクターに変化するといったサービスが登場するかも知れません。
そうなってくると「生身の女性はもう必要ない」という男性が増える可能性もあります。風俗業界にとってはまさに一大事。ユーザーのみならず、風俗業界にかかわる人間の死活問題とも言えるでしょう。
AIと風俗でもうひとつ思い浮かぶのが(フェイクポルノからは少し離れますが)ラブドール風俗です。
セックスロボットと呼ばれるAI搭載のラブドールはすでに実用化され、実際に販売もされています。
スペイン初のセックスロボット売春宿「Lumidolls」の人気嬢・サマンサなどは有名です。彼女には、相手が乱暴なお客さんだったりした場合はセックスを拒否する機能が備わっているとか。つまり、ロボットなのに疑似的な感情を備えているわけです。
こうしたセックスロボット売春宿はスペイン以外にも存在します。ロシアのモスクワには「Lumidolls」と提携したホテル「Dolls Hotel」がオープン。セックスロボットと一緒にお泊りできると評判になっています。まさにSFのような世界です。
生身の風俗が消滅することはない
AI技術の発達によって、生身の女性はフェイクポルノ、あるいはVRやセックスロボットに取って替わられるかも――と書きましたが、実は筆者はそれほど悲観的には考えていません。
なぜなら、どんなにAIが発達しても風俗のお仕事は生身の人間にしかできないからです。
2018年にベストセラーになった本に『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子・著/東洋経済新報社・刊)という書籍があります。著者はこの中で、AIには「読解力」が決定的に欠けていると指摘しています。
読解力とは、一般的には文章などを読み解く能力のこと。そこではテキストの情報を解釈し、自分なりに考える能力も必要となってきます。
こうした読解力は日常生活でのコミュニケーション全般に関わってきます。つまり、文章だけにとどまらず、他人の気持ちを読み取って察知することにもつながるのです。
これはAIでは決して代替できない能力だと言えるでしょう。そして、風俗で行われる対面接客サービスにはこうした柔軟なコミュニケーション能力が不可欠なのです。
セックスロボットが性交渉を拒めるようになったといっても、それはプログラムによってそうした反応をするよう仕組まれているだけに過ぎません。風俗店でのサービスに必要な真に「人間的な」駆け引きはAIにはまだまだ不可能なのです。
フェイクポルノの話題からちょっと飛躍してしまったので、話を元に戻します。
フェイクポルノはなかなかやっかいな代物ですが、AIのアルゴリズムで合成か否かを簡単に見破れるそうです。
AIで作成したフェイク動画をAIが見破るとは皮肉な話ですが、所詮、フェイクはフェイク。本物には適わないということなのでしょう。
仮に、これらのテクノロジーがさらに発展していっても生身の風俗がすべてフェイクに移行するとは考えにくいものがあります。
せいぜい、AIやVRを使った「フェイク風俗」と従来の「リアル風俗」の住み分けが進むだけで、生身の女性の需要はこの先も残っていくに違いありません。
むしろ、生身の女性はレアな存在となり、リアル風俗が高級風俗化していくことも予想できます。
そうなると、ますます生身の人間によるきめ細かなサービスは重要性が高まります。AIに頼らない、血の通った接客がこれからの風俗業界を生き残っていくための最重要テーマとなってくるわけです。
どんなにフェイクが進化しても最後は人間力が勝つ――風俗にかかわる人間は決してそこを忘れてはならないでしょう。