埼玉県屈指のベッドタウンとして知られる西川口。
かつては違法風俗店が多く、その独特の営業スタイルから 「NK(西川口)流」 という言葉も登場するほどの風俗街として、大人の男性たちの遊び場となっていました。
しかし現在ではそうしたイメージは鳴りを潜め、中華街としての新たな顔を持ち始めています。
昔と今とでは大きくイメージが変わった街、西川口をここで紹介します。
西川口の歴史・変遷
そもそも西川口はどの辺りにあるかというと、埼玉県の川口市。 川口市と言えば埼玉県全体でいえば最南端ともいうべき場所で、荒川を挟んで東京都北区ともつながっています。
その川口市の中でも北西に位置しているのが西川口。
西川口が現在のような街の形態に変わっていったのは戦後間もない1954年頃。
この年に西川口駅が開業し京浜東北線が通るようになったことで、西川口は現在のステイタスを得るようになりました。
都心からほど近く、さらに都内に住むよりも家賃が安くなるということから、戦後復興の勢いに乗じて団地やマンションなどの集合住宅が多数乱立するようになり、西川口は一気にベッドタウンとしての地位を築き上げていきます。
人が多く住むようになると次にできるのが、飲食店などのお店。
1960年代に駅周辺が整備されたことをキッカケに鉄塔横丁という繁華街が誕生。
西川口の周辺にはオートレース場や電車で10分圏内のところに浦和競馬場があるなど、ギャンブル場が多くあるため必然的に人が多く集まり、競馬場やオートレース帰りの男性が居酒屋で食事をするというのが常習化。
さらに隣の川口駅は工場が多くあったため、工員たちが仕事帰りに当時新興の飲食街だった西川口で食事をするというのは当たり前の光景となっていきました。
そうして西川口は、ベッドタウンでもあり歓楽街でもある、という2つの顔を持つ街として今日に至っています。
西川口と風俗について
そんな西川口と切っても切れない関係と言えるのが、風俗。
もともと鉄塔横丁が栄えたように、歓楽街としての顔を持っている西川口には男遊びの定番フレーズ「飲む打つ買う」の3拍子の内、歓楽街の居酒屋で「飲む」、オートレース場や競馬場で博打を「打つ」という2つが揃っていました。
そうなると必然的に女を「買う」要素が入るのは時間の問題と言えました。
西川口に風俗店が増えたのは1970年代に入ってから。
当時の風俗はいわゆる店舗型のヘルスが多く、東京では土地代が高くつくためテナント料も必然的に上がりました。
しかし、東京都心からほど近くにある西川口ならテナント料は割安で、なおかつベッドタウンであるために人通りも多め。
加えて「ギャンブル場が近いために風俗遊びを好む男性が多くいる」という風俗側からしたらメリットばかりの街であったため、この時期に風俗店が乱立しました。
西川口の風俗遊びといえば「NK流」。
この頃の西川口はいわゆる違法風俗店が多く乱立している状態でした。
特に多かったのがピンクサロン。
ピンクサロンの基本サービスは女性が口で男性のペニスをフェラしてフィニッシュまで持ち込むことですが、西川口では口でのサービスだけでなく、本来禁止とされている本番行為までサービスするようになっていました。
西川口に店舗を構える風俗店にとっては、東京に住むお客さんの集客に悩んでいて、それを打破する作戦として挙げたのがこのNK流でした。
男性客からすれば、口でフィニッシュを迎えるつもりで来ていたものが、まさかの本番サービスまであると悪い気はしません。
女性がリードして挿入までしてくれることがほとんどなので、男性の立場で見ると「チップも払っていないのに、ここまでやってくれるなんて……」というお得な感じが芽生えてきます。
それで指名客をガンガンと得る女の子も多く、中には月収100万円を超えてかなりの稼ぎになったという方もいます。
コストパフォーマンスがよく、なおかつそれが当たり前として成立しているのであれば、男性からしたら夢の街とも言える西川口。
いつしか人づてにその情報が流れていき、気が付けば「西川口=違法風俗の街」という印象で語られることが増えていきました。
しかし、近年はそうした違法風俗の一斉摘発が徐々に行われるより、NK流と称されたサービスを行う違法風俗店はほぼ絶滅。
現在でも西川口には風俗店が多数ありますが(当グループも出店しています)、風営法を遵守する健全なお店ばかりで、違法なサービスをするお店は全くと言っていいほどありません。
リトル・チャイナタウンになった現在の西川口
違法風俗店が徐々に姿を消していき、西川口には空きテナントが多く見られるようになりました。
かつて隆盛を極めた鉄塔横丁も現在はあまり元気がなく、西川口はベッドタウンとしての色合いを深めていきました。
しかし、そんな空きテナントに目を付けたのが在日中国人たちでした。
都心から近いという地理的なメリットはやはり在日中国人たちにも魅力的だったようで、空いたテナントを多くの中国人たちが買い取り、中華料理店や中国の文化を色濃く残すお店が続々とオープンするようになりました。
横浜の中華街、神戸の南京町、長崎の長崎新地中華街など、日本には各地にチャイナタウンと称される街がありますが、現在の勢いでいえば西川口が随一。
なにせ駅前にある商業施設のビーンズ西川口にも中国人たちの好みを反映するようなお店が多数並び、かつて駅前の商業施設でありながら空き店舗だらけだったころからは一変しました。
特に中国の揚げパンと称される油条や豆乳を売るお店には連日多くの中国人が集まり、本場と変わらぬ味を楽しんでいます。
また、街を歩いていると焼き小籠包のお店や中国人向けの中華物産店も多くお店を構えていて、本家の中華街以上の品ぞろえを誇ります。
今やリトル・チャイナタウンと化したこともあってか、2018年の西川口の総人口はなんと60万人を突破。
かつて住みたくない街ランキングの上位にいたとは思えない人気ぶりを見せています。
意外と住みやすい!? 西川口の住宅事情
かつて違法風俗店が多く点在していたこともあり、西川口の評判は今一つでした。
都心からほど近いというアクセスの良さを誇りながらも、住みたくない街ランキングでは常に上位に入っていました。
ところが現在はむしろ住みやすい街として再評価の声さえ上がってきています。
その理由のひとつにあるのは物価の安さ。
もともと在日中国人が多くの中華料理店を開いたことも関係していますが、中華料理店の多くはランチタイムになるとリーズナブルな価格で定食を提供していることがほとんど。
中にはご飯おかわり自由でワンコインの定食を提供しているというお店も少なくありません。
また隣接する東京都北区には料理系の専門学校などが多くあるため、上京してきた学生が西川口に住むケースも多く見られます。
ちなみに西川口の家賃の相場はワンルームでおよそ5万5000円。
これが隣接する東京北区にある東十条の街と比べるとその差は約2万円。
たった10分電車で移動しただけでこんなに家賃が変わるのであれば、こっちに住もうという人がいても不思議ではありません。
先述したように人口が60万人を超えたというのも納得です。
やっぱり気になる!? 西川口の治安問題
いくら住みやすくなったからと言っても、昔のイメージを未だに引きずるところがあるのが西川口。
違法風俗店の数は減っても風俗店そのものはなくなっていないため、イメージ的に治安が気になるという方も多くいるでしょう。
しかし特に気にする必要はない、というのが最近の一般的な意見のようです。
埼玉県警が発表している事件事故発生マップを見ると、2017年に西川口の街で起こった事件はひったくりが9件。自動車盗難が6件。
全くないというわけではありませんが、そのほとんどは駅前から離れた住宅街でのもの。
実際に住んでいる人たちの話を聞くと、「駅前近くはキャバクラや風俗店があるためか人通りが多くそうした事件はほとんど見ないが、夜中に住宅街を歩くと電灯が少ないので怖い思いをした」 という声が多数聞かれました。
この傾向は、特に西川口だけに限ることではありません。
まとめ
昔と今とでは大分街の様子が変わった西川口。
都心からほど近いというアクセスの良さとコスパの良いお店が多い、というのはやはり魅力的です。
都内近郊で1人暮らしを考えている人にはおすすめの街と言えるでしょう。
昔のイメージのままでいると損をしてしまうかもしれません。